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| TEXT&PHOTO: Yasuko Nagoshi Category : ESSAY |
2009.11.02
ワインライター名越康子さんのイタリア紀行・最終回は昨年行われたトスカーナワインの試飲会レポートをお届けします。「キアンティ・クラッシコ」、「ヴィーノ・ノービレ・ディ・モンテプルチアーノ」、「ブルネッロ・ディ・モンタルチーノ」と3つのワイナリーでの試飲会で目にしたこと、感じたこととは?

イタリアという国は、北から南までいたるところでワイン造りが行われている。そして、中でも代表的なワイン産地のひとつがトスカーナ地方。ここトスカーナでは、白ワインもあるけれど、何といってもサンジョヴェーゼという名前のぶどう品種から生まれる赤ワインの宝庫なのだ。しかも面白いことに、サンジョヴェーゼという品種はキアンティ・クラッシコでは「サンジョヴェーゼ」、モンテプルチアーノでは「プルニョーロ・ジェンティーレ」、モンタルチーノでは「ブルネッロ」と呼び名が変わり、その性質も変化する。つまり、育つ環境によって個性が変わる繊細な性質の品種ともいえるのだ。
フィレンツェからシエナの間に広がるキアンティ・クラッシコ地域では、標高が高めで海からの影響を受けず、昼夜の寒暖差が大きいことなどから、比較的エレガントで香り高い赤ワインができる。それに対して、より南に位置して海にも少し近いモンタルチーノ地域では、常に風が吹き、寒暖差は大きいけれど全体的により温暖となることから、比較的ボリューム感があり力強いタイプの赤ワインとなる。そして、もうひとつのモンテプルチアーノ地域では、モンタルチーノより少し内陸に入り比較的平坦な畑が多く、ソフトでエレガントな赤ワインが出来やすい。

さて、この3つのワイン産地にはそれぞれ生産者が組織する生産者協会があり、毎年2月に大規模なプロ向けの試飲会を行っている。5日間にわたって3つの産地の若いワインを試飲し続けるこの会に参加するのは、数えてみると今年で7回目。毎年通っていると、それぞれのワイン産地で進化、変化を遂げている様子が実感できるのが面白い(ただ、1日にたくさんの若い赤ワインを試飲するので、夕方には皆お歯黒状態。ホテルに戻って歯磨き2回、そしてデンタルフロスが必須!)。

PHOTO : Yasuko Nagoshi
キアンティ・クラッシコを一同に集めた試飲会は、毎年2月にフィレンツェ市内で行われる。ソムリエにサービスしてもらいながらテーブルでじっくり試飲することも、生産者のブースに行って直接話しながら試飲することもできる。

まずは、フィレンツェ市内で行われたキアンティ・クラッシコの試飲会へ。フィレンツェで開催されるからなのか、ここ数年試飲会場のしつらえもなんだかとってもモダンでおしゃれ。ずらりと並ぶボトルの数は、まだ未完成の2007年ヴィンテージのサンプルから、2001年のものまで含め、合計すると358本。2日かけてもすべての試飲は困難なので、今年リリース開始となった2006年にまずは焦点を当ててみた。
「理想的な天候に恵まれた素晴らしい年!」というだけあって、非の打ちどころのないワインがいくつも見受けられた(日本にもそろそろ入荷し始めるはずなので、見つけたら「買い」をお勧めいたします)。ちなみに、この試飲会では直近のヴィンテージ情報、つまり今年でいえば2008年の情報が発表される。2008年は「最高の年、とまではいえないが、良い出来でクラシックな年といえる」とのことだった。

次に訪れたのはモンテプルチアーノ。この街にも中世からの建物がそのまま残されていたり、近隣に温泉が出ていたりするから、観光客の姿もチラホラ。けれど、ワイン産地としての規模は小さく、造り手の数も30社ほどで、試飲会場も何というかアットホームな雰囲気なのだ。今年リリース開始された2006年の出来は「ほぼ順調な天候のもとにぶどうが生育して、熟成可能なワインに仕上がった」という評価で、なるほどバランスのよいワインが多かった。昨年の2008年は「収穫が少し遅めとなったが、質のよいぶどうが得られた」という発表。
そして、最後の地がモンタルチーノ。丘の頂に城があり、その敷地内に仮設テントを建てての試飲会。こちらは約150社が参加して、今年リリース開始となった2004年のブルネッロ・ディ・モンタルチーノと2007年のロッソ・ディ・モンタルチーノ(ブルネッロの弟分的存在)がお披露目された。両方全部の試飲はやはり困難なので、ブルネッロに集中することにした。2004年は「ずっと順調な天候で素晴らしい出来の年」で、全体的に安定感がある印象。2008年は「生育のスピードは遅めだったが、総括的には順調な年」。生産者協会の公式発表で、4つ星が付けられていた(満点は5つ星。ちなみに2004年も4つ星だった)。
そういえば、モンテプルチアーノからモンタルチーノに移動する際、オルチャ渓谷を通ることができた。残念ながら写真を撮りそこねてしまったのだが、ここは世界遺産に指定された素晴らしい景観が眺められる。車窓からといえども見ていると心の中が洗われるよう。なだらかな丘に羊の群れを見つけて「あ、羊だ!」と私が反応したとき、車を運転してくれていた知人が「おいしいですよぉ」と言ったのには笑いましたが・・・。ともあれ、トスカーナには街の中にも郊外にも、楽しみがたくさんある。アグリ・ツーリズモの施設があるワイナリーも結構あるので、ワイン好きの方にはおすすめです!
名越康子
なごしやすこ/ワイン輸入会社勤務を経て、ワインジャーナリストとして独立する。ワイン専門誌『ワイナート』(美術出版社)をはじめ、一般誌にも幅広く執筆。2005年にシャンパーニュ騎士団より「シュヴァリエ」の叙任を受ける。08年夏に、鳥取県の名産食材を扱う、イタリアンレストラン「オステリア・モンテマーレ・トットリーネ」をプロデュース。現在も執筆業と2足の草鞋で活躍中。
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