LATELY

KIOKU
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初展覧会の作品を基に制作

のぎすみこの最初の展覧会『27人の二人』は約1年半に渡り、のぎ自身ともうひとりの女性を被写体にした写真作品を展示。この作品を編集したCD-ROMは今回の展示会場でも販売されている。1994年から制作を始めた作品だが、当時切り取られた瞬間は今なお新鮮な驚きを持って受け手に迫る。

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FACES

10年間の集大成『やくたたず』のぎすみこの衝撃。

2010.04.02

10年間の集大成『やくたたず』のぎすみこの衝撃。

ゆるぎなく「鬼才」、紛れもない「芸術家」。形態にとらわれず、自身の「いま」を表現し続け、近年はダンス公演のプロデュースも手掛ける芸術家・のぎすみこ の過去10年間の作品を集めた展覧会『やくたたず 』(a Waste of Space)が東京・広尾にあるギャラリーTOKIO OUT of PLACEで開催されています。その軌跡と、創作にまつわるエピソード、アートの醍醐味についてお伺いしました。


PHOTO : Jun Miyashita
会場全景の中で。平面作品以外は「人の手で作って、人に伝えるものだから手で触れてもらっても構わないですよ、常識の範囲内でね(笑)」と話す。

―2009年はダンス公演『牛2』をプロデュースされ、ギャラリーでの作品展示は久しぶりになりますね?
〝そうですね。昨年は外科手術の病院内個室で『出芽』という入院展をしました。それを観たギャラリーOUT of PLACEの方からお話があり、この10年間の作品を詰め込んだ、居心地がいいような、悪いような…そんな空間に仕上げたつもりです〟

展示は私にとって旬のもの。今回は過去に展示をした作品を集めましたが、次回展示することがあればまた、まったく違う見せ方になる

―過去の展示についても非常にコンセプチュアルで、表現方法も多岐に渡っており驚きました。
〝今回の展示では過去の作品を持ってきているけれど、どの作品もそもそもは「このスペースでこの作品をやりたい」というところから始まっています。それは、作家活動を始めたころからずっと同じですね。ほかの作家さん達が同じ作品をいろいろなところで展示していることも知らなかったくらい(笑)。とにかく、展示は私にとって〝旬〟のもので、この箱にこの色、このコンセプトで、ご覧になる方が〝今のワタシ〟を振りかけて食べてください、と〟


PHOTO : Jun Miyashita
手前は『ひつじ』(2002)。ひつじと一体化してゲリラパフォーマンスも行った。この作品は非売。「死んだらこの作品と一緒にお棺に入りたい」とのぎ氏。奥はドロッピングと万華鏡写真等のミクストメディアのシリーズ『しみ』。

―作品制作を始められたのは20代後半になってからとか?
〝はい。もっと若い頃は何をやりたいとか、なーんにもなかった! 肉体労働をして、酒を飲んで…の繰り返しの生活を送ってましたね〟

―何も!? 家業を継ぐニットデザイナーとして活躍されていましたよね?
〝それは親父がニットの一級士で、長女だったから、勝手に跡を継ぐもんだと思ってたしね。そのうち時代の流れとともにニット産業は衰退し、やりたいことも何も見つからなかった。けれど、ニット業界でちょっとは有望だった私は(笑)、始めて1年で賞をとったんだよね。それで、副賞としてイタリア、フランス、イギリスの繊維工場へ行かせてもらい、その中でもイタリアがすごく印象深く…〟

―何歳頃のことですか?
賞をとったのは19歳のころ。そのあと数年して、イタリアに貧乏一人旅に出たらちょうど卒業シーズン真っ盛りでして。芸大や武蔵美、多摩美なんかっていう美術大学の子達と話してたら面白くて、東京に戻ったらまた会おうと盛り上がりました。もともとその世界が嫌いじゃなかったからか、彼らのサポートをしたいと思い始めたのがアートの世界へ踏み込む、ひとつの大きなきっかけ。

―それが、作家活動につながったと…。
〝アートの何が楽しいって、「深読み」が楽しい。今回のタイトル『やくたたず』に添えた文章にも「ふかよみ」という言葉が何度かでてきますが、アートの醍醐味は勝手な深読みの深さだと思ってるから。勉強のために毎日かかさずいろんな画廊にいって作品を見て回り、若い作家と話をしてみると、その作家さんたちがあまりにも私の中のアーティストというイメージとかけ離れていた。たまたまですよ! 素晴らしいアーティストは無論世の中に存在するわけですが、その時勘違いして(?)私がやろうと思ったわけです〟

―そして、30歳で最初の展覧会『27人の二人』(1995)を開催されたんですね。
〝はい。1年半くらい前から企画書を持って動き出しましたね。まったくもっての手探り状態でした。それからずっと決まったギャラリーへの所属をせずに、自分で企画をたて、場所を探して展覧会をやるというやり方をしています。作品の素材も一定ではないから、「毎回違うのね」と言われることもあり、悩んだ時も実際ありました。でも今はこれでいいのかなと思っています。しかもついに、去年はダンスにも手を出してしまいました〟


PHOTO : Jun Miyashita
『あなたの正義はお元気ですか?』。正義(まさよし)はのぎ氏の実父。2000年版と2010年版が表裏で展示されている、この個展の象徴的な作品でもある。

考え抜いた末に得たものは、なんて美味しいんだろう!と。まるで水出しの珈琲のようですね

―最近は〝見る〟ほうでもダンス公演が多いとか?
〝狂ったように観てます(笑)。(『牛2』にも出演した)黒沢美香さんや海外だとフィリップ・ドゥクフレなど。ダンスが絵画より優れているなんてことを思っている訳ではなく、“すごく深く考えていれば、そこにたどりついたであろうことを、この人たちはちゃんと考えているんだ”と感じられるものが好き。別にジャンルは関係なく、例えば昔の「劇団ひとり」とか、お笑いにだって同じものを感じるときもあります。考えた末に得たものはなんて美味しいんだろう、と。水出しの珈琲みたいにね。濃縮だけどサラリとしている。それが楽しい〟

―まさに、のぎさんの展示にも同じような印象を受けます。コンセプトについては、どうやって考えをまとめるのでしょうか?
〝単純ではないですね。何かをやろうと思ったときも瞬間で思いつくのではなく、延々とそのことを考えている。たとえば『おっぱいマフラー』(※2001年発表/女性の胸を象ったマフラー型の立体を使った一連の作品)でも、おっぱいのマフラーがあったら楽しいなー、ではなくて、「あなたは温かいもので首を絞めてはいませんか?」という言葉が最初にあって。『これはあなたを温められるけど、あなたを殺すこともできます』というのが一番言いたいこと。受け手は怖さと優しさを両方同時に感じられれば何よりだけど、どちらかだけの人がいてもいい〟

―受け手の「読み」に任されている、と。
〝そうです。今回の『やくたたず』展についても、「やくにたたないものはあるべきだが、やくたたずから何を拾うか、は、やくたたずが主張することではない」と思っています(笑)。結果として、あなたにとって「やくたたずになり損ねた作品」になれば、有難いこと〟

―哲学的ですね。言葉でのコンセプトをいつも最初に作るんですか?
〝色々ですね。ひとつ自慢していいですか(笑)? 小さな頃から、こういうことを考えるのが大好きで、それに練習しなくてもお習字や絵で金賞とるような子どもだったんです。でもあるとき自分の書いた(描いた)ものを母親にみられ「気持ち悪い」って言われて、中学2年で書くことも、創ることの一切を止めたんです。高校ではトランペットなんて吹いちゃって。当時封印したものが、いま巨大噴火みたいに出てきているのかもね〟

―なるほど。歪めた過去のイメージにひかりをあてる、ともバイオグラフィーに書かれていましたね。
〝「子ども」のことは強く意識しています。既に私は子どもではないのですが、当時の自分を客観的に「あの子はかわいそうだった」とは泣くことができる。そんな私の中にいる過去の子どもについて考え、現在に連れて来て思考することはよくあります〟

―誰のなかにも、そんな「子ども」は住んでいるのではないでしょうか?
〝うん。多分いると思いますね。ひとりひとりの中にいる子どもに対して、何かを投げかけることができる。それは忘れてもいい記憶かもしれないけれど、忘れないことで豊かにもなれると、どこかで思っています〟


PHOTO : Jun Miyashita
ART FAIR TOKYOにも出展される『少女風鈴』(2006)、『Sノ微睡ミNノ穴』(2010)シリーズ。

―実際に作品と対峙したら、皆さんも感じるところがあると思います。そして、この先の「のぎすみこ」はどこへ行くのでしょう!?
〝それは…野たれ死ぬかもしれないし、皆さんにヨイショされて作品が増え続けるかも知れませんし(笑)、分かりません。ただ、やりたいことは腐るほど、鬼のようにある。もちろん皆さんにヨイショされて創り続けたいものですが、このまま死ぬまでに創り続けたとしても、私の頭の中にあるものが全部表現することが実現するかというと、しない可能性だってある。ここに10年間の作品をまとめたわけですが、ここからまた、はじまっていくわけです〟

のぎすみこさんの作品は2010年4月2日~4日に東京国際フォーラムで開催される「ART FAIR TOKYO」OUT of PLACEのブースNo. E-16にも展示されます。ギャラリーTOKIO OUT of PLACE『やくたたず』のぎすみこ展覧会期は以下の通り。曰く「一部を切り取ると全体が見えなくなる、カメラマン泣かせ」だという、その作品の全体像を体験するには、ぜひ会場に足を運んでみてください。

a Waste of Space / nogisumiko
やくたたず・のぎすみこ
2010年3月26日(金) - 4月24日(土)
open : 水 - 土曜 12:00 – 19:00 日月火休廊
※アートフェア東京 開催中はギャラリーもオープンしています

TOKIO OUT of PLACE
東京都港区南麻布4-14-2 麻布大野ビル3F
Tel. 03-5422-9699
www.outofplace.jp

のぎすみこ

のぎすみこ
1965年2月1日生まれ。桑沢デザイン研究所中退後、父の元でニットデザイナーとして勤める。1985年『砂漠の夢』で横編ニット組合主催のコンテスト金賞、山本寛斎賞を受賞するがその後の経営不振に伴い中華店、バイク便、便利屋などの仕事を転々とする。1993年頃から「表現する」ことに興味を持ち1995年トータルオーガナイズした初の展覧会『27人の二人』展を開催。その後も精力的に作品を発表し、2009年は入院する病院での展示『出芽』や横浜三渓園でのダンス公演『牛2』を企画。
HP: http://www.nogisumiko.com/