LATELY

KIOKU
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PHOTO: epimetheus

記憶に残る、想い出のお菓子

クリエイションの下敷にもなっている、マルシャル氏の記憶。「見習いで入ったパティスリーで毎日のように作ったサヴォワのトルテや、祖母の果樹園で収穫したミラベルという果実で作ったオードヴィ…。幼少時代から食については豊かだったと思いますね」と懐かしんでいた。

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FACES

自由な創造と愛からつくられる、情熱のショコラ。

2010.02.10

自由な創造と愛からつくられる、情熱のショコラ。

名実ともにショコラブランドの最高峰に君臨する、パリの「ラ・メゾン・デュ・ショコラ」。厳選された素材を用いて、ひとつひとつ丁寧に手づくりされるショコラは、その美しさもあって、しばしば宝石にたとえられるほど。今回SHOT °Magazineは、バレンタインに合わせて来日したジル・マルシャルさんを取材。自身のロマンティックな恋情に端を発する、深くて甘いインスピレーションの源を探りました。


PHOTO : Atsushi Mano
今回の来日では、阪急うめだ本店と松屋銀座本店の特設売り場にて、パッションフルーツとジンジャーのガナッシュをデモンストレーション。レシピはHPにも公開されている。

私がつくるショコラは、私の実体験から生まれるのです

―メディアの取材対応やイベントでのデモンストレーションなど、大忙しのご様子ですね。今回の来日では、どのような印象を受けられていますか?
〝日本に来るのは、もう15回目くらいかな? とにかく、もう正確に記憶できないほど来ていることは間違いありません(笑)。それで、いつも思うのですが、私たちの店にいらしてくださる日本のお客さまは、「ラ・メゾン・デュ・ショコラで買う」ということを、特別なこととして感じてくださっているようですね。私たちはそれを、たいへんな誇りとして受けとっています。百貨店でのイベントにも、たくさんの方にいらしていただきました。サインを求められることも多いのですが、熊のぬいぐるみとか、電子辞書にサインしてほしい、といった変わり種もあって、驚きましたよ〟

―今回、バレンタインコレクションとしてつくられたコフレは、その名も「禁断の果実」。とてもロマンティックなネーミングですね?
〝アダムとイブの誘惑の果実であった赤いリンゴを、青リンゴに置き換えて使ってみようというアイディアから生まれました。実は、私のごく個人的な恋愛体験から着想を得ているのですが、それについては、触れなくてもいいですよね?〟


PHOTO : Atsushi Mano
松屋銀座本店でのディスプレイ。グリーンのアップルが象徴的

―では、何かヒントをいただけませんか?
〝私は恋人のことを、「マ・ポム・ヴェルト」(私の青リンゴ)と呼んでいるのです。彼女から電話があると、iPhoneにも名前ではなくて、「青リンゴ」と表示されます。実をいうと、あらゆるものにこの名前を使っていて、私の書いているブログのタイトルも「青リンゴ」なんです。恥ずかしいけれど、今、私は完全に「青リンゴ」にヤラレているというわけです〟

―なるほど、青リンゴは恋の果実というわけなんですね?
〝日本でも、例えば恋人同士で樹の下に座って、ときには幹に二人の名前を彫ったりしますよね? そんなとき、いわゆる幸せの樹、愛の樹は何かといえば、昔からリンゴの樹であることが多いのです〟

―日本の島崎藤村という詩人も、そんな情景を詩っています。日本人の感性からも、共感できますね。
〝私がつくるショコラは、私自身の実体験からインスピレーションを得て生まれることが多いのです〟

―だから、人の心を打つのですね?
〝そうかもしれませんね。去年のクリスマス用につくったコフレも、私の子供時代の思い出の香りを封じ込めたものでした〟

―今回のコフレ・バレンタインには5種類のショコラが入っていますが、それぞれどんな意味合いが籠められているのでしょう?
〝「果実の誘惑」「出会い」「惹かれ合う」「誘惑」「マリアージュ」——二人が育む恋のステージを、5つのアロマで表現しています。ある意味、ゲームにも似た感覚です。バレンタインデーに、「僕達って、今どの段階かな?」という感じで、互いの愛を確かめ合えれば素敵ですね〟


PHOTO : Aaron Shumaker
どんな質問にも真摯に、またチャーミングな答えを返してくれるマルシャルさん

―そんなストーリー性があったとは! マルシャルさんは、ショコラティエというより、小説家のようですね。
〝ただ夢想家なだけです(笑)。私はもう20年間もこの仕事に打ち込んできて、伝統の継承という意味でも、大切な責務を果たしてきたつもりです。だから、これからはもっと、自分のパーソナルな夢やロマンを仕事に表現していけたらと思っています〟

―もっと自由な発想から、ショコラを考える、と。
〝ええ、最近はとても自由にクリエイションに取り組めるようになりました。この前のレセプションでは、オリーブオイルとパルメザンのガナッシュというものをつくりました〟

―料理とショコラの斬新なマリアージュですね。
〝ショコラというのは、実は一番初めは料理に使われていたのです。そういったルーツを辿ると、可能性がまた広がっていきますよね。日本の山椒を使ったこともあります〟

―お忙しい中、山椒を使ったショコラをつくるというような実験は、いつどこでされるのでしょう?
〝私の場合、ほとんど頭の中で済んでしまいます。山椒というのはコショウの一種ですので、柑橘系のアロマがあります。ベルガモットやグレープフルーツといった柑橘類とチョコレートは、非常に相性が良いので、あとは頭の中で配合のバランスを考えながら、注意深く組み合わせていくだけですよ。実際につくってみて、あまりイメージとずれることはありませんね〟

―素晴らしい才能ですね!
〝まあ、たしかにちょっと普通ではないかもしれませんね(笑)〟

―最後に、次に考えられているクリエイションについて教えていただけますか?
〝これまでコフレ・バレンタインをつくり続けながら、ずっと考えていたんです。ラ・メゾン・デュ・ショコラのショコラを贈られた男性が、ホワイトデーにお返しするためのショコラがないのはおかしいと。赤いコフレを贈られた男性がお返しするのは、緑色のコフレです。ホワイトデーなので、箱には白い花の絵が描かれます。フランスではバレンタインデーに、男性から女性に花を贈ることが多い。そこで、贈るものはショコラであっても、お花のモチーフを飾ろうと。多くの女性が、このホワイトデーのショコラを贈られるといいですね。日本の男性諸君はぜひ頑張ってください(笑)〟


PHOTO : Atsushi Mano
マルシャル氏は、ボックスの“愛の木”を描くにあたって、アールヌーヴォー時代の画家グスタフ・クリムトの『生命の木』からも着想を得て、コフレのデザインに表現した。

※「ラ・メゾン・デュ・ショコラ」コフレ・バレンタイン
2010年のバレンタインに世界の恋人たちへ贈る限定コレクションのテーマは「禁断の果実」。愛の木に実る「禁断の果実」に魅せられ、思わずひと口頬張りたくなる……そんなショコラを赤いコフレに詰めました。
T1 4粒入り 25g ¥1,900
T2 9粒入り 60g ¥3,600
T3 16粒入り 110g ¥5,500
T4 30粒入り 215g ¥8,900

「果実の誘惑」〜Tentation〜
青リンゴのコンポートの酸味と、ミルクチョコレートの優しい甘さの魅惑的なハーモニーが特徴。「禁断の果実」をひと齧りしたい誘惑に、思わず負けてしまいそう。「恋のアプローチ。もっと近寄りたい、もっと知りたいと誘惑されるイメージです」(ジル・マルシャル)

「出会い」〜Première rencontre〜
ガーナ産カカオを使用した、プレーンなダークガナッシュ。焙煎したコーヒー豆やスパイスのノートが感じられるこのガナッシュは、アフリカの灼熱の太陽を彷彿させる、力強い味わいです。強さと情熱に溢れた味わいは、まるで初めて二人が出会った瞬間のよう。「プレーンなガナッシュに初めて巡り会う。感じるのは、ミステリアスな酸味とパワフルなアロマ」(ジル・マルシャル)

「惹かれ合う」〜Affinités〜
マルドン産の塩をほんのり効かせたヘーゼルナッツ入りのプラリネを、ミルクチョコレートが優しく包み込む。ヘーゼルナッツの食感、優しい甘さ、ほんのりとした塩味……。さまざまな面に惹かれ合う二人のよう。「甘さと塩味のコントラスト。異なる二人だからこそ惹かれ合うということを表現しています」(ジル・マルシャル)

「誘惑」〜Séduction〜
ジンジャーの辛味が微かに効いた、爽やかなパッションフルーツ風味のダークガナッシュが誘惑します。恋に落ちてしまう二人を表現しています。「相手をより独占したい、恋を成就させたいという誘惑と情熱を、パッションフルーツのアロマに託しました」(ジル・マルシャル)

「マリアージュ」〜Alliance〜
ブルボン産とタヒチ産の2種類のバニラで風味付けした、キャラメルソース入りのダークチョコレート。甘くて優しい味わいのマリアージュが、ハート型のチョコレートに象徴されています。「互いに幸せな様子を、2種類の甘いキャラメルソースで表現しました。心も人生も相手に委ねるマリアージュ。そんな将来を夢見て、想いを伝えてください」(ジル・マルシャル)

ラ・メゾン・デュ・ショコラ 丸の内店
東京都千代田区丸の内3-4-1 新国際ビル1階
Tel. 03-3201-6006/Open. 11:00~20:00
http://www.lamaisonduchocolat.co.jp/

ジル・マルシャル

ジル・マルシャル
わずか12歳でパティシエになることを決意し、1984年から「メッツ」のクロード・ブルギニヨン氏に師事、二つ星レストラン「シャトールー」にて最初のキャリアをスタート。その後、ルクセンブルグ「オーバーワイス」やパリの高級ホテル「ル・ブリストル」シェフパティシエなどを経て、2007年3月『ラ・メゾン・デュ・ショコラ』創立30周年の節目にクリエイティブディレクターに就任。