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KIOKU
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PHOTO : LCBGlenn

世にも非凡な料理人の原点。

「もともとシェフをめざして渡仏したわけではなく、夫の駐在期間に料理を学び始めたのが業界に入るきっかけ」という狐野さん。その非凡な才能の遍歴はレシピ付きエッセイ『フミコのやわらかな指』(朝日出版社)にも詳しい。ルーツをたどれば子どもの頃に親戚の〝じじ〟と楽しんだ料理も思い浮かぶとか。

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FACES

フランスと日本の食文化をつなぐ唯一無二の存在。

2010.06.11

フランスと日本の食文化をつなぐ唯一無二の存在。

フランスが誇る名店「アルページュ」で偉大なシェフ、アラン・パッサール氏のもと、スタージュからわずか3年でスー・シェフにまで上り詰めた、狐野扶実子さん。その地位に甘んじることなく、出張料理人として新たな名声を得、現在は日本とフランス、そして世界を駆け回り、食文化を伝播。これまでの「料理人像」の枠を大きく飛び越えた、狐野さんの新たなステージやプライベートについてお伺いしました。


PHOTO : Jun Miyashita
フードフランスビストロ「レセプションパーティー」でのプレゼンテーション。「ビストロ文化を伝えるために、思い出話、エピソードなど伝え、それを通してビストロに関心を持っていただきたいと思っています。そういう日常性がビストロの醍醐味だと思います」(狐野さん)

本当の家族ではないけれど、その「温かさ」が味わえるのは、ビストロならではの醍醐味なんです。

―フードフランスとしては初の「親善大使」となってのご心境は?
〝最初にフランスに渡ったときから、日本とフランスの間で文化交流にかかわる仕事がしたいと思っていました。今回、親善大使というお仕事をいただいて、大変ありがたく、嬉しく思っています。フランス各地から来日をされる6つのビストロのみなさんの想いなど、責任をもってお伝えしたいと思いますし、成功させられるよう頑張りたいと思います〟

―アラン・デュカスさんとは今回のテーマである「ビストロ」について、どのようなお話をされましたか?
〝日本ではこれまで、「ビストロ」という形態がはっきりとした形でフランス人から伝えられるという機会が無かったと思います。ただ、雰囲気でなんとなく盛り上がったというか…。そこで、デュカスさんは「本当のビストロ」を日本のみなさんに紹介したいと考えられたそうです。私は、日本とフランスの両方の文化を知る人間として、間に入ってできるだけ多くのことお伝えするようにしたい、と申し上げました〟

―日本には「本当のビストロ」が伝わりきっていないと?
〝というより、フランスの文化にとても深く根付いており、昔からあるものですから「これがビストロです」とは一言で説明しきれないものなんですね。今フランスにあるビストロも定形ではなく、フランスの文化が変化していくなかで、同じように変化し続けているし、成長している部分もある。今回の趣旨は「生きているビストロ」を切り取って、リアルタイムでフランスのビストロを紹介するということにあるんです〟

―今回のフードフランスは東京だけでなく、大阪でも開催されますね
〝デュカスさんが日本に「ビストロ」を広めたいと思っていらっしゃる気持ちをお手伝いする上で、東京と大阪のふたつの都市で開催するというのも意義があると思います。大阪も食の文化にすごくこだわりがあるところですし、アラン・デュカスさんのレストラン「ル・コントワール・ド・ブノワ」もありますよね。そして、「地方」というのも食文化にとって大切なトピックです。そんなこともあり、この2箇所で開催することになりました〟

―狐野さんにとってのビストロの醍醐味とは?
〝もちろん、気軽だし、楽しみにいくというのはあります。それに加えて、疲れた時に心に染みるのがビストロの料理です。お店に来れば「癒されるなぁ」となる。ビストロは家族経営の食堂が原点です。家族的な温かさがないと、いくら気楽でもファストフードになってしまいますから〟

―思い出の逸品というのはありますか?―
〝「ウフ・マヨネーズ」という「ゆで卵のマヨネーズがけ」でしょうか。フランスではどこのビストロにもあって、一番安い前菜メニューですね(笑)。でも、それが日本のビストロにはなかなか見当たらない!ゆで卵とマヨネーズだけを出すということが、外国料理のレストランという特別な空間に来てくれるお客様に申し訳ないと考えているお店が多いからではないでしょうか?そうではなく、フランスではもっとも身近で、どんなビストロにもあって、「こんなシンプルな食材だけど美味しく出来るんですよ」ということを伝えたいですね〟


PHOTO : Jun Miyashita
多くのゲストが訪れたパーティーは、東京会場である ビストロ『ブノワ(BENOIT)』にて。第一回目「オ・リヨネ」(6月10日~15日)をはじめ、4軒の名ビストロのシェフがこちらで腕を奮うこととなる。

レストランを持つシェフではない。その立場をいかして食文化の架け橋になりたいと思っているんです。

―今は日本をベースとされていますが…。
〝確かに「書類上のアドレス」を問われると東京なんですが、特にベースというものを決めているわけではなく…(笑)。たまたま夫の駐在期間が終わって、私も仕事の契約による制約がないタイミングでしたので、日本に帰ってきたというだけで。住むところはどこでも構わないんですよ。飛行機に乗って飛んでいけば、どこであっても私の仕事は出来ると思っています〟

―まさに腕一本!ですね。ご自宅ではどんなお料理を作られるのでしょうか?
〝和食が多いですね。焼き魚とか大根の煮付けなど、本当にシンプルな。やはり日本の食材に目が向きますし、アメリカやフランスにいたときはりんごが好きだったんですけど、今はアジア系のフルーツを食べますから…。空気の中に含まれている塩分などが違うからでしょうか?当たり前ですが、風土に根ざして身体や頭で食べたくなるものってあると思います。ニューヨークにいた頃は、やっぱりハンバーガーが美味しいなと思ったり、ね〟

―フランスにはどういったペースで戻られているんですか?
〝料理教室の講師の仕事などがあるので、毎月パリに行くような感じです。あとはギャラリー・ラファイエットの期間限定レストランのメニュー作りなど、いろいろなコンサルティングやチーズのプロモーション、ワインやシャンパーニュの会社のお仕事もしています〟

―ワインについてですが、出張料理人をされていた頃、ソムリエも帯同されていましたが、彼らには何を求めていましたか?
〝ただ、お客さまが料理と向きあう時に心地よくいられるようにサポートして欲しいということです。料理を食べて楽しんでいるのに「わざわざ」その会話を遮って、ワインの説明をして欲しいと思いませんね〟

―狐野さんの料理は「フレンチでありながら、繊細な軽やかさが際立つ」と評されていますが、、濃いワインを要望されたことも多かったのでは?
〝難しいと思ったこともありますが、必ずしも濃いワインに、濃い煮こみ料理が合うわけではないですよね?それに本当にワインを主にしたい場合、料理をそんなに考え過ぎず、ワインを引き立てることを考えればいいんです。例えば、鹿をローストし、脇に添える一品を考える。でも、料理とワインのことをそんなに難しく考えるべきじゃないと思います。もっと、色々と試してみたらいいんじゃないでしょうか!〟

―狐野さんご自身が、お好きなワインは?
〝私は特にシャンパーニュが好きです。シャンパーニュは「これじゃないとだめ」というのではなくて、どんな料理にも合いますし、その懐の深さがいいと思っています。そう、ハーブでいうと私の大好きなセルフィーユのようなものでしょうか〟

―なるほど。さて、この先、日本の皆さんが狐野さんのお料理をいただける機会はあるのでしょうか?
〝まだ、はっきりとは決めていません。ただ、あるとしても私の料理をふるまうフェアという形ではないと思います。フランスでアラン・デュカスさんの料理学校で教えるときは、私がポイントを解説、実演し、生徒のみなさんが料理を作って最後にみんなで試食するという形式。日本でもこういう形式では、あるかもしれませんね。私は例えば「フランスと日本」という国の間にいて、文化の架け橋になりたいんです。あとは「シェフと主婦」、プロフェッショナルと一般の方々の間を繋ぎたいとも思っています。店を持つシェフではなく、レストランを持たない立場だからこそできることがあるかも知れないと、いつも考えていますね〟

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狐野扶実子

狐野扶実子
パリの名門料理学校「ル・コルドン・ブルー」を首席で卒業後、アラン・パッサールによる3ツ星レストラン「アルページュ」にスタージュ(研修)として入り、わずか3年でスーシェフ(副料理長)に就任。その後、パリを拠点にシラク元大統領夫人など世界中のVIPを顧客に出張料理人として活躍し注目を集め、パリの老舗食材店「フォション」で初の女性・東洋人のエグゼクティヴ・シェフに抜擢される。現在はイベント向けのメニューやレシピ開発、テレビや雑誌などでも多彩に活躍中。昨年フランスで刊行された「ラ・キュイジーヌ・ド・フミコ」は2009年グルマン料理本大賞の女性シェフ部門で世界最優秀賞を受賞。日本での著書に『ルベイとフミコのビストロ・ヌーヴォー』(文藝春秋)など。
フードフランス HP : http://www.chateauxhotels.jp/foodfrance/