中村江里子さんインタビュー

13 December 2011 ・ 03:45 PM JST

中村江里子さんインタビュー

TEXT : Kyoko Ono

PHOTO : Jun Miyashita

 

フジテレビのアナウンサーとしてその顔を知られ、1990年代、数々の人気番組に出演されていた中村江里子さん。2001年にフランス人のシャルル・エドワード・バルト氏と結婚され、現在はパリと東京を行き来しながら、フリーアナウンサーとして、さらに講演や執筆もされるなど、幅広い活躍をされていらっしゃいます。プライベートでは1男2女の母親である江里子さん。女性として、妻として、そして母として忙しい毎日を送られている彼女に、パリでの暮らしについて、また美しさと健康の秘訣などについてお話を伺ってきました。

◆パリの良さは「緑」と「ゆったりした時間」◆

-東京とパリを、どのくらいの頻度で行き来されていますか?
3人子供がおりまして、それぞれのスクール予定なども増え始め、最近は調整するのが大変にはなってきましたが、少なくとも年に2回は、子供たちと一緒に東京に来たいと考えています。季節でいえば夏と秋に。あとはそれ以外でもう一回来られたら、というのが私の理想ですね。

日本にいると恋しくなるパリのもの、逆にパリにいると恋しくなる日本のものを教えて頂けないでしょうか?
物ではないのですが、日本が素晴らしいなと思うのは、どこでも穏やかで心地よいサービスを受けられることですね。フランスでも勿論、そういったサービスを受けられる場所はありますが、日本は本当にどんな場所でも、例えば一般的なコンビニやカフェなどでも、皆さん本当に笑顔で、穏やかに対応してくださると感じます。残念ながらフランスはそうではない場所もあるので、時折、そういったサービスの中に身を置くという“居心地の良さ”が恋しくなりますね。逆にパリの好きなところは、緑や公園が街中のいたるところにあって、ゆったりとした時間が流れているところでしょうか。パリも都会ですので、フランスの他の地域に比べれば「特別に忙しい」と言われますが、それでも、東京よりは随分ゆったりしているなと感じます。

—フランスに住み始めた頃、馴染むのに時間がかかったことはありますか?
やはり『言葉』の問題でしょうか。言いたいことが言えない、思っていることが言えないというのは、本当にストレスでしたね。直接、対面で話すのであれば、ジェスチャーなども交えて、どうにか伝えることができますが、電話の場合は、全くチンプンカンプンで通じないことも多く、しばらく「電話に出るのが怖い」という時期がありました。最初の2、3年は、ほとんど留守電にしていましたね。「電話に出る」なんて当たり前のことができないなんて、大人になってからはそうそうないですよね。「自分は何もできないんだ」という無力感を感じたりもしましたが、すべてゼロからやらなくてはならない、という意味で、人間として原点に返ったような感覚もありました。一生懸命話しているのに馬鹿にされたような態度を取られ、落ち込むこともありましたが、それでも、「生きていくために話さなくては」と必死でしたね。

PHOTO : Jun Miyashita

◆「一人になる時間」が本当に大切です◆

辛いとき、ストレスが溜まったときは、どのように解消されていますか?
私は温かい飲み物が大好きなので、カフェなどで、湯気を見ながらぼんやりしたり、本を読んでみたりする時間が、一番リラックスできますね。「一人になる時間」が一日に30分だけでもあると、それだけで十分に気持ちが落ち着きます。子育てをする日々のなかで、すごく贅沢な時間だと感じますね。あとは夜に子供たちを寝かせた後、パートナーがまだ仕事から帰ってきていない時間に、一人でシャンパンを軽く飲むこともあります。ですがフランスではあまり、一人でお酒を飲むという習慣がないらしく、彼には、「君はトラブルを抱えているのか?」「キッチンドランカーみたいだ」と批判されまして、気持ちよくほろ酔いになっているのに、台無しにされる、ということもありましたね(笑)。私は、特別に「どこかに行きたい」とか「買い物をしたい」と思うことはあまりなく、そんな風に、一人でふっと力を抜ける時間を持つことが、一番のストレス解消法ですね。

—江里子さんの朝は、どのようにスタートしますか?
子供たちを送り出すまでは、ひたすらバタバタと準備に追われます。朝ご飯は、バゲットやクロワッサン、パンオショコラやヨーグルトなど、よくあるフランスの朝食ですね。私の母が来仏すると、「もっと卵焼きとかサラダとかも作りなさい」と勧められることもあるのですが、私はパンが大好きですし、家族もそういった朝食に馴染んでいますね。子供たちは、シリアルやオートミールなども好きなので、よく出しています。そうして、上の2人の子供を送り出してから、温かい物を飲んで、一息つきます。以前はカフェオレだったのですが、最近は煎茶が気に入っています。そうして朝、温かい飲み物を飲むと、「一日が始まったな」と感じますね。あとは、本当に時々ですが、時間があるときは、次女(現在1歳4ヶ月)を連れて、カフェに行き、そこで朝食をしてみることもありますね。

—変わらずスリムでいらっしゃいますが、普段行っている食事法はありますか?
参考にならなくて申し訳ないのですが、基本的には食べたいものを食べる、という感じですね。私は割と痩せやすい体質で、気をつけていないと痩せてしまうので、逆に「きちんと食べること」を心がけています。子育てを始めてからは、さらに忙しくなり、今は食べるのを忘れたりすることもある状況なので……。今朝も本当に時間がなく、仙台駅で購入した『萩の月』とカフェラテをカバンに突っ込んで、家を飛び出してきましたが、食べないよりマシかな、という感じですね(笑)。時間があるときは、もう少し栄養のあるものや、バナナやおにぎりなどを食べるようにはしています。食事制限をするよりは、「きちんと食べてきちんと動いて、健康に体型を保っていたい」と考えていますね。

 

—エクササイズなどはされますか?
特別な運動はしていませんが、子育てで十分に体力を使っているように思います。家の中では次女を左手で抱っこしながら、右手で料理や仕事をすることもありますし、上の子たちと公園で1時間走り回ったりすれば、すぐに食べたエネルギーより、消費量のほうが多くなる、という感じです。ダイエットしたい方には、「うちの子を1週間お貸しします」と言っているくらい(笑)。それだけで、十分に引き締まると思いますよ。

あと、パリにいると本当によく歩きます。東京にいるときは、ヒール靴のほうが「脚に緊張感を感じて好ましい」と思っていたのですが、パリでは本当に沢山歩くので、スニーカーやペタンコの靴を履くようになりました。パリは、駐車場のことを考えると、歩いたほうが早い、というような場所も多く、メトロも階段だらけですから。ただ、日本では渋谷から赤坂まで、なんて距離は絶対に歩けないのですが、パリだと、同じ距離でも、何故か歩けてしまうのが不思議です。空が大きくて、緑も多くて、公園も沢山あって、ドングリが落ちていて……と、歩いていて気持ちがいいからかもしれません。今回、長女が東京へ来て、「東京には季節がないね」と言ったのですが、子供がそう感じてしまうくらい、パリの街は自然を感じます。

PHOTO : Jun Miyashita

◆美しさを保つ秘訣、パリ式ファッションのこと◆

—ビューティールーティンなどはありますか? スキンケアで心がけていることは?
朝夜の基本的なスキンケアをしているだけですね。心がけているのは最低限のこと、「清潔にしておくこと」「保湿をしてあげること」、この2点だけです。ローションのパッティングが好きなので、毎晩、時間が許す限りそれを行いながら、原稿を書いたり、メールを書いたりする時間に充てています。ですので、わざわざエステに行ったり、特別なケアをしたりということはないですね。パートナーが化粧品の仕事をしているので、試作段階のものを使ってみることもありますよ。「これを毎日しなくては」と決め込んでしまうと、逆にがんじがらめになって、ストレスになってしまうので、それよりは、「いたってシンプルなことを毎日続ける」ことが大切だと考えていますね。

—フランスはコスメなども非常に豊富ですが、今の流行などはありますか?
どうでしょうか……。そもそも、フランス人の友人女性との間で、コスメやスキンケアの話題があまり出ないのですね。どこへでも男女カップルで出向く“カップル社会”で、女性だけで集まる機会が少ない、という理由もあるかもしれません。男女どちらもいるので、映画のお話ですとか、共通の話題をしている気がします。私のパートナーが、仕事の関連で化粧品の話をすることはありますが、皆さん、「ふむふむ、なるほどね〜」と聞いている感じで。私達の友人の間では、特にコスメについて…「○○がいいらしい」というような話にはならないですね。

 

—ファッションはどうですか? 今のパリのスタイルなどはありますか?
表立った流行などもあまりありません、「自分に似合うものを好きに身につければいい」という感じですね。美容法もファッションもそうですが、基本的には、パリでは「自分のスタイルでいい」という精神があるように感じます。若い人たちも、例えば東京の同世代の人達に比べると、そこまで自由になるお金をもっていない人達のほうが 多く…だからすでに持っているものに、何か一点、今年らしいものを加えるというような感じです。私も、日本に住んでいるときは、アナウンサーという職業柄、必然的に、流行のお洋服を身につけることを求められて、そうしていた部分もありましたが、元々は「好きなものを長く着たい」主義で、実は10年前のジャケットが一番お気に入り、という感じでした。パリに行って、「あぁ、やっぱりこのスタイルでいいんだな」と再確認しましたね。

—パリのほうが、自由に着たいものを着られる感じですね。
そうですね、確かに自由です。「こうしなくてはいけない」というのが、ファッションにおいてもない気がします。私も40歳を過ぎてから、生脚でミニスカートなども履くようになりました。肩が出るお洋服など、下着をつけないで着たほうが素敵な場合、つけないのがパリでは自然なことですが、東京でそういうことをしたら、周囲の方が、「あの人、下着をつけてない」と、視線を感じることもありますよね。パリでは他人のファッションをとやかく言うことがないので、そういった意味で、精神的に自由というか、開放されている部分はありますね。それぞれでいいし、本人が「こうしたい」というのを、周りが素直に認めてくれる、という感じです。

 

PHOTO : Jun Miyashita

◆自由な分、“大人”の社会かもしれません◆

—ブログで拝見しましたが、9月に「(再)結婚式」をされたそうですね。
中村江里子さんの(再)結婚式に関するブログ記事はこちら
はい。結婚10年目を記念して、「ファミリーとして、新たに、これからも宜しく」という意味での『(再)結婚式』を開きました。フランスではパーティーを日常的に行いますが、今回のような、10年前と同じ場所で、同じドレスで、全く同じパーティーを……というのは、誰も見たことも聞いた事もないということでした。
当初、神父さまに説明したときも、怪訝な様子だったのですが、コンセプトを分かっていただいた後は、「本当に素敵なアイデアだね」と言ってくださいましたし、来ていただいた方にも非常に喜んでいただけるパーティーになりました。
「私も真似したいわ」なんて言ってくださった方もいて嬉しかったですね。

—フランス的な男女のリレーションシップとは?
フランスは『カップル社会』ですので、どちらか片方しか面識がない方の場合でも、パーティーや結婚式などには、必ずカップルで招待されます。結婚していないカップルの場合でもそうですね。もちろん、時の流れのなかで、友人の連れてくるお相手が変わることもありますが、「それはそれ」という感じで。来る、来ないは別にしても、基本的には「お2人でいらしてくださいね」と招待するのが普通ですね。

—パリに住むようになられて、ご自身で変化を感じる部分はありますか?
自分ではあまり変化に気付かなかったのですが、母に以前、「物をはっきり言うようになったわね」と言われたことがあります。パリでは、大人として必要なところは、はっきりストレートに主張します。私は元々、比較的そういう性格だと自覚していたのですが、日本にいる頃は、多少はオブラートに包んでいた部分があったのだな、と思いました。
そして母から、日本にいるときは、「もう少し『NO』や『違うと思う』ということを、優しく言ったほうがいい」と指摘されました。それからは、「違うと思います」と主張するときは、ひと呼吸整えてから、コミュニケ−ションを取るように心がけるようになりましたね。他にも、悪気はなくても、フランスで当たり前のことが、こちらで当たり前でないことが、色々とあります。どちらが正しいということではなく、自分が心地よくいるために、この点は考えていかなくてはならないなと思っていますね。

パリに住むようになって、ファッションに限らず、「こうしなくてはいけない」という考え方をしなくなったので、精神的には楽になりました。ですが、その分、「自分で自分の責任をとる」という大変さはあるなと思います。日本はサービスも行き届いているので、何か困ったら、電話して、すぐに助けてもらえますが、フランスでは、修理など依頼しても1ヶ月以上先だったりするのは当たり前です。「ならば、もう自分たちでやってしまおう」なんてことが必然的に増えてきますね。他人のことを干渉しないので、変わった人がいても「ああいう人もいる」と大らかな社会ですが、「自分のことは自分でやりなさい」「自分で責任を持ちなさい」という下地があるので、ある意味、“大人”の社会だなとも感じますね。

—江里子さんが、精神的な部分で「心がけていること」はありますか?
私は、小さいころから、両親に「謙虚でいなさい」「感謝をしなさい」ということを教えられて育ってきました。しごく当たり前の教えではありますが、これらは自分の心に「余裕」がないとできないことですよね。ですので、私はなるべくいつも、「ゆったりと、穏やかな人間でいたい」と思っています。謙虚さを持って、穏やかな気持ちで動いていると、有難いことに、自然と周りの方も助けてくださって、自然に感謝の心も生まれる気がします。どんなに忙しいときでも、「穏やかな人間でいたい」というのが、私の心がけですね。

PHOTO : Jun Miyashita

◆プチ・クエスチョン◆

—今のフランスの季節食材は何ですか? どこで日常食を仕入れていますか?(SHOTブロガーである野菜ソムリエCanacoさんからの質問)
今の季節は、シャンピニオン、ポアロー(西洋長ネギ)、ベトラーブ(ビーツ)、カボチャ、いちじく、などでしょうか。フランスのカボチャは『ポチロン』というのですが、かなり巨大なものです。日本のカボチャですと、『ポチマロン』という種類になるようです。ポチロンはスープなどに使うことが多いようですが、一度、日本式にカボチャの煮物を作ろうとしたら、水っぽくて全然ダメで。それ以来買っていません(笑)。我が家の近所のマルシェは、水曜と土曜にマルシェが開かれるので、基本的にはそこで1週間分の食料を購入しています。忙しくて時間が合わないときは、スーパーマーケットなどでも購入することはありますが、マルシェで日常の食材を購入されている方は多いと思いますね。

—秋はワイン、新酒やボージョレーの季節ですが、現地の消費者はどんな風に楽しんでいますか?(SHOTブロガーであるソムリエール西村さんからの質問)
カフェに「ボージョレー」のポスターが貼られたりして、「ああ、そんな季節だな」と感じたりはするのですが、日本のように予約したり、そのために集まってパーティーをして……ということは、パリではあまりしないようです。たまたま別のパーティーがあって、「じゃあ今はボージョレーにしようか」ということはありますが、あくまで普通の生活の中で楽しむといいますか、季節の風物詩の1つ、という感じですね。

—最近、読んでいる本は?
山崎豊子さんの『二つの祖国』という本を読んでいます。時代は違いますが、二つの国のアイデンティティを持っている、という意味で自分と重なる部分があり、興味を持ちました。非常に考えさせられる部分があり、第三巻までは一気に寝ないで読みましたが、以降多忙になってしまい、最終巻を夏からずっと読めていない状況なのです。今回も旅行カバンに入れてきましたが、時間があれば早く読み終わりたいですね。皆さんにおすすめしたい本、ということであれば、『Love You Forever』という絵本ですね。親に感謝をし、子供を大事にしていこうと思える、とても温かい素敵な絵本です。

—お気に入りのバケーション先は?
ベトナムでしょうか。すごくエネルギッシュな街で、食べ物もおいしくて。時間ができたら、また子供たちを連れてみんなで行きたいなと思っています。

 

13 December 2011 ・ 03:45 PM JST

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