映画『シャンハイ』公開記念。菊地凛子さん&ミカエル・ハフストローム監督インタビュー

29 August 2011 ・ 02:30 PM JST

映画『シャンハイ』公開記念。菊地凛子さん&ミカエル・ハフストローム監督インタビュー

PHOTO : Jun Miyashita

 

―今作を撮ろうと思われたキッカケは?
監督:私が働いているワインスタイン・カンパニーが『シャンハイ』の脚本の権利を持っていましてね。私が読んだ時には、書かれてから既に10年くらいは経っていたでしょうか。以前にも何度か制作への試みがあったようですが、私はこの脚本をとても気になりまして、今回ようやく実現に至ることができました。

―10年というのはとても長い年月ですが、なぜこれまで映画化されなかったのでしょうか?
監督:理由は様々にありますが、世の中にはたくさんの脚本があり、実際に制作されるのは、ほんの少数です。「シャンハイ」もその一つだったわけですが、今回ようやく制作に至り、完成させることができました。

―菊地さんが今作に出演されることになった経緯は?
菊地さん:海外の映画は、ほとんどがオーディションなのですが、今回は有難いことに、直接私に「どうですか」とお話をいただきました。殆どのキャストが決まっているなかで、スミコという役だけが不在だったそうです。脚本を読ませていただいた段階で、「これは良い映画になる」という強い期待感があったので、お引き受けさせていただきました。

―撮影現場での監督は、どんなご様子でしたか?
菊地さん:これまでご一緒させていただいた監督とは、また違ったタイプの監督でした。『見守る型』とでも言いましょうか。「こう演じてほしい」という指示を強く出してくるのではなく、役者に、どう演技したいかを任せてくれる部分も大きかったです。あまり何も言ってこられないので、たまに役者側が不安になって、「こんな感じで大丈夫でしょうか」なんて確認を取りにいったりするくらい(笑)。役者からすれば、良い意味で非常に『責任感』を感じました。こういった演出方法も、とても面白いなと感じましたね。

“スミコ”は難しい役柄だった

Photo by Jun Miyashita

―“スミコ”という役を演じてみて、いかがでしたか?
菊地さん:スミコはアヘン中毒者なのですが、何かにAddict(中毒)している役というのは、とても難しいです。非常に台詞も少ないなかで、どう演じるか。とても集中力を必要としました。タフな仕事でしたが、今までとまた違う役柄にチャレンジできて、貴重な経験をさせて頂きました。

―菊地さんは普段、どのような役作りをされているのでしょう?
菊地さん:役作りにあたって、時代背景のリサーチや登場人物の勉強などは、もちろん最低限しますが、現場に入ってみての空気や、共演者たちとのやりとりで最終的に作っていく部分も残しています。あくまで私の芯は持ちつつ、しかし決めきらずに……という感じでしょうか。

―錚々たる役者たちが揃う現場だったと思いますが、どんな印象でしたか?
菊地さん:どの方も素晴らしかったのですが、私が特に印象に残ったのは、コン・リーさんです。本当に美しい方でした。ハリウッドなどでも、最近はカジュアルでラフな雰囲気の女優さんが沢山いらっしゃいますが、彼女は、どの瞬間も”これぞ女優さん”、という雰囲気やオーラを持っていらして……。そういった姿を見て、私自身も勉強になりましたね。

―普段から目標とされている女優さんはいらっしゃるのでしょうか。
菊地さん:色々なインタビューで挙げさせてもらっているのですが、昔から変わらず憧れているのは、ジーナ・ローランズさん。演技だけでなく、生き方もとても潔くて、とにかく憧れの方なのです。今でも新しい作品を見るたびに、彼女の演技に刺激を受けていますね。

※ジーナ・ローランズ
1930年生まれのアメリカの女優。ブロードウェイからキャリアをスタートさせ、1957年以降は、映画界へも進出。代表作はアカデミー主演賞にもノミネートされた「こわれゆく女」「グロリア」。TVドラマにも数多く出演し、80歳を超えた現在も勢力的に活躍中。独特の貫禄を持ち、たくましい女性の演技に定評がある。

今後の2人のチャレンジは?

Photo by Jun Miyashita

―菊地さんは国際的な映画に多数出演されていますが、そのことをどうお感じですか?
菊地さん:最近、私のことを“海外の映画に出ている日本の女優代表”のように言っていただくこともあるのですが、それには少しだけ、困惑してしまうときもあります。私はずっと、ただただ興味の向く方向に進んできた、それだけです。国籍などは、ただ生まれた場所がどこかということであって、最終的には個人の問題ではないでしょうか。国の違いでエンターテインメントの幅を狭めてしまうのは、非常に勿体ないことだと思います。

―今後、お二人がチャレンジされたいことは?
監督:仕事でのチャレンジとしては、刺激的な、新しい次のプロジェクトを見つけること、でしょうか。この(映画)業界にいると色々なことがありますが、とはいえ、それが生活のすべてではないと思います。私には家族や子供がいます。仕事と家族、この2つを組み合わせて、この2つの世界から最高のものを作りだすこと。絶えず楽しみながら続いていくことが、僕にとってのチャレンジですね。人生には多少の困難があるべきだと思いますしね。そうでないと退屈でしょう?(笑)

菊地さん:うーん、難しい質問ですね。常にチャレンジをしているからでしょうか、特に「これからチャレンジするぞ!」という具体的な事柄は思いつきません。私のアイデンティティは「映画をやっていること」で、常に心がけているのは、「これまでと違うことをやる」ということ。そのチャレンジのなかで、いつも戦いつつ、それを楽しんでもいますね。もちろん、これまでと違うこと、見聞きをしたことがないことをやるのは、想像以上に大変なときもあります。でも私は、いつもそこに”面白いこと”があると思っていますし、そのチャレンジが私をイキイキさせてくれる。新しい場所で新しい仲間に出会っていけるのも、とても楽しいことです。これからも、このスタンスでやっていこうと思っています。

人生は、“心がけて楽しむ”ことが大事

Photo by Jun Miyashita

―やりたいことを実現させてこられたお二人。読者に向けて、良い30代を送るためのメッセージが何かあれば、いただけますか?

監督:僕は、人生経験を積んでいくことはとても良いことだ、と思っています。年を重ねると物事が簡単になるとは思いませんが、少なくとも人生経験が豊富になるので、色々な物事に対処することができるようになる。それは素晴らしいことです。あとは、できるだけ面白い生活を送るようにすることかな。できるだけ面白い人生を送って、そこから学ぶこと。これは僕自身での課題でもあります。そのためには、常に努力が必要だったりもしますがね。

菊地さん:私が言えることは、“楽しむこと”、そして“諦めないこと”でしょうか。辛い、苦しい、悲しい……などと言っているほうが、実はラクだったりするのですが、私は、何をやっていても、そのなかに“楽しみ”を見つけようと思っています。「物事の何にフォーカスして、どう感じるか」。人生はそれ次第で、大きく変わってくるのではないでしょうか。

■プロフィール紹介
ミカエル・ハフストローム(みかえる・はふすとろうむ)/1960年、スウェーデン生まれ。ストックホルム大学で映画を学んだ後、ニューヨークの大学で美術を学ぶ。映画評論家、テレビ映画監督を経て、2001年に『Days Like This』で初めて劇場映画を監督。2003年 『Evil』でアカデミー外国語映画賞にノミネートを果たし、その後、活動の拠点をハリウッドに移す。サスペンス映画で高い評価を得ており、代表作は『1408号室』『ザ・ライト-エクソシストの真実-』等。

菊地凛子(きくちりんこ)/1981年、神奈川県生まれ。1999年、新藤兼人監督の「生きたい」で映画デビュー。以後、「三文役者」「空の穴」「17才」などの映画に出演する一方で、TVドラマなどでも活躍。2006年、ブラッド・ピットも出演している話題作「バベル」で、耳の不自由な日本人女子高校生役を熱演。ナショナルボード・オブ・レビュー賞新人女優賞獲得をはじめ、全米で数々の映画賞の候補に挙げられるなど、一躍、世界的な注目を集める存在となった。以降も、国内外を問わず、多数の映画作品に精力的に出演を続けている。

 

29 August 2011 ・ 02:30 PM JST

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